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渡辺真史が見た、BROOKSのラグジュアリーな世界(前編)|BROOKS

BROOKS|ブルックス

渡辺真史が見た、BROOKSのラグジュアリーな世界|BROOKS

BROOKSの中枢を担う「ゴースト」は、世界で最も多くのランナーに愛されているシューズの一つだ。創業100年の歴史が生み出してきた、数々のスタンダード。誠実なものつくりの結晶は、人々がランニングシューズに求める理想に対して、明確な回答になっている。そして今、BROOKSの次なるステージはライフスタイルやファッションマーケットへの参入にある。そのために私たちは、もっとブランドの哲学を知る必要があるようだ。東京カルチャーの重鎮である渡辺真史は、実直なBROOKSの「ゴースト」をどうみたか。

Interview & Text by OZAWA Masayuki|Photographs by MAEDA Akira

卓越した機能で評価された70年代

1914年、22歳の青年ジョン・ブルックス・ゴールデンバーグがアメリカ、ペンシルバニア州フィラデルフィアにて「ブルックス シューカンパニー」を設立。革製の海水浴用シューズやバレエシューズの製造を開始し、様々なスポーツシューズを手掛けるようになった。

アメリカにおける実質的なスニーカーの歴史は、スポーツがマスメディア化し、素材の開発が急速に進んだ1970年代から。ベトナム戦争後、平和なムードを取り戻したアメリカは健康志向からジョギングブームが到来し、ランニングシューズが注目されるようになる。

BROOKSは1974年に名機「ヴィラノバ」を開発。1975年にはクッション材にEVAを初めて搭載したことで、ランニングシューズの開発競争に先鞭をつけたことで知られている。ゴムよりも軽くて柔らかく、クッション性に優れ、スポンジより反発性能に優れるEVAは、瞬く間にミッドソールのスタンダードになっていった。1977年には「ヴァンテージ」を発売し、ランニング専門誌の権威「ランナーズワールド」のシューズコンテンストで(1978年、1979年)5つ星を2年連続で獲得するなど、名声を欲しいままにしていた。

トップアスリートのトレーニング用モデル「HYPERION TEMPO(ハイペリオン テンポ)」は2020年のランニング市場を盛り上げた大きなトピック。高いクッション性と反発性のバランスを追求しながら、軽さも備えた理想的な一足。ミッドソールに採用した最新のフォーム「DNAフラッシュ」が特徴だ。

有名なエピソードを駆け足で説明したが、その後のBROOKSは、他の多くのスポーツメーカーと同じように専門分野の成功体験を他のジャンルに生かそうと本格的なアスレチック企業になろうとした。
NBAならジェームス・ウォージー、テニスではジミー・コナーズなどの人気選手とエンドースメント契約をするなど多角的な展開を進めたが、長くは持たなかった(これも他のスポーツメーカーと同じことだが)。

結果として強みを活かす方向に舵をとり、2000年にランニングシューズに特化したブランドとして新しい歴史を歩むこととなった。このタイミングでCEOに就任したジム・ウェーバーは、2013年の米国フォーブス誌のインタビューで「私たちはナイキが完成させたゲームをプレイしていたが、成功しなかった」と述べている。しかし今では、ランニングマーケットで全米No.1のシェアを獲得している。

さらに誇張させてもらえば、アメリカのランナーは人気スポーツブランドよりもBROOKSを愛しているということだ。その人気を支えているのが、2008年に誕生して以来、毎年バージョンアップを続けている「ゴースト」シリーズ。

競争が激しいランニングシューズ業界で、どんな個性があるのか。その答えはシューズの「標準化」を追求しながら、そこにラグジュアリーな価値を定義しているところにある。
ビギナーからエリートの練習からレースまでカバーする幅の広さをもち、万人が履き心地の良さを体感できるクセのなさ。これから走ってみたいと思う人が専門店に足を運べば、足のことを考えるスタッフは自信をもってBROOKSの「ゴースト」を勧めるのである。

BROOKSの高い履き心地は、ソールの高いクッショニングや素材選びにある。外側と内側で硬度の異なるラバーソールは、スムースな蹴り出しと走行安定性、そして耐久性をカバー。ミッドソールの「DNA LOFT(ロフト)」は2018年に開発されたテクノロジー。従来のクッション性能を30%向上させており、ビギナーから中級ランナーまで幅広く支持されている。

BROOKSがいいリズムを掴んだのはここ10年のことだが、既に日本でも浸透し始めている。そしてこれからの課題は、ランナーに向けて構築されたブランディングをどうライフスタイルに根付かせていくかにある。

そこで、東京カルチャーを牽引してきたデザイナーであり、MIYASHITA PARKの「DAYZ」では多くのスニーカーを提案する渡辺真史氏に実際に最新の「ゴースト13」着用してもらった。

履き心地がファッションを勝るとき

渡辺 「80年代にヴァンテージを履いていたことがありました。もちろん当時は若かったし、履き心地を考えたことはなかったですが。BROOKSが興味深いのは、ランニングに特化させたこと。シューズへの信頼の裏には、そうしたストイックな姿勢があると思います。

BROOKSはきっと、走る人のために作られた靴。これだけ多くのランナーに愛されているということは、ランニングシューズの理想的なデザインを最大公約数で表現しているんだと思う。過去にはニューバランスが、最近ではホカオネオネがそうだったように、ヒットするかどうかと思っていたシューズが、モノ作りからなる履き心地の良さによってファッションになり得た例がいくつかあります。BROOKSもそういった可能性を秘めている。

足入れしたときに履きやすい感覚はすごくありました。アメリカって、日本やヨーロッパよりもジョギングが習慣化しています。道も広いし、自然も多いし、いろんなシチュエーションがある中でこのシューズが選ばれる理由もよくわかる。デザインも合わせやすいし、買い求めやすい価格設定だから、いろんな人たちが履く。それがBROOKSの良さなんだと思います。」

かつて渡辺氏が履いていた「ヴァンテージ」が日本に上陸したのは1979年と言われている。走るための道具だったスニーカーが初めてファッションになった頃だ。
90年代にスニーカーが俗物の対象となり、さまざまなネガティブな事件が起きたのは知られた話だが、それよりも15年以上前に、この「ヴァンテージ」が人気のために盗難が続出していたことは知る人ぞ知る事実。
東京の有名なインポートショップで取り扱われていたこのモデルは、当時の若者の憧れだったのだ。

筆者は少し世代が後ろのため、80年代の盛り上がりをリアルに体験はしていないが、93年頃になると各メーカーが過去のランニングの名品を復刻するトレンドが生まれ、その時にBROOKSの「ヴァンテージ」や「ヴィラノバ」が選択肢の一つであることを雑誌が教えてくれた。

人気ブランドに比べて寡黙なブランドだが、作りの良さに定評がある、そんなイメージが10代の頃に出来上がっていたように思う。リーバイスの501XXにナイキのコルテッツを合わせるのは王道的な発想だったが、BROOKSを合わせる人はより古着好きで、通な人だった。

後編に続く

渡辺真史
1971年生まれ、東京都出身。モデルからキャリアを開始し、ロンドンへの留学やストリートブランドで経験を積み、DLXを設立。2004年に自身のブランド、ベドウィン & ザ ハートブレイカーズを立ち上げ、ストリートを席巻。2020年に開業した新商業施設RAYARD MIYASHITA PARK内にセレクトショップ「DAYZ」をオープンさせたばかり。

ゴースト13
2008年に販売開始した「ゴースト」シリーズの13代目。歴代のモデルが米ランニンング専門誌「ランナーズワールド」が総合的な観点からシューズを評価する「エディターズチョイス」賞を受賞。「It’s automatic」というキャッチコピーの通り、スピードに関係なくずっと気持ちよく走っていられるシューズ。その裏には前後で硬度を変えているミッドソールや、ヒールに耐久性を高めるためにグリップしいやすい構造。そして足を支えるヒールカウンターのクオリティなど、目には見えにくい部分に高い技術を投入している。オールホワイトは日本限定カラー。1万3000円(税別)。

BROOKS(ブルックス)
1914年創業の100年を超える歴史をもつ全米シェアNo.1のランニングシューズブランド。
ランニングシューズ界では今でこそ当たり前となったEVA搭載シューズを1975年に開発し、シューズ界の“スタンダード”を確立するなど、数々の革新的技術を搭載したランニングシューズで、ビギナーからトップアスリートまで、数多くのランナーをサポートするとともに、今もなお革新性に挑み続ける。

“RUN HAPPY”をブランドメッセージに、ランニングがライフスタイルとして根付く米国で最も支持されているブランドであり、製造工程におけるブルーサイン認証の取得や昨今の環境問題にも配慮したミッドソールの開発など、サスティナブルな取り組みも高く評価されている。

問い合わせ先

BROOKS公式サイト
https://www.brooksrunning.co.jp/

アキレスお客様相談室
Tel.03-5338-8440

出典:Web Magazine OPENERS

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