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世界で最もパワフルなSUV「アストンマーティンDBX 707」に北海道で試乗|Aston Martin

Aston Martin DBX707|アストンマーティンDBX707

試乗して見えた、DBX 70の本質とは?

アストンマーティン初のSUV「DBX V8」のハイパフォーマンスモデルとしてデビューした「DBX 707」。車名の通り707psを誇るラグジュアリーSUVを、北海道はニセコを拠点に試乗した。

Text by YAMAGUCHI Koichi|Photographs by Aston Martin

ウルスやカイエンを凌ぐハイパワー

アストンマーティンがブランド初となるSUV「DBX V8」を投入したのが2019年のこと。英国の名門スポーツカーブランドならではのSUVらしからぬスタイリングと走りで、世界中の注目を集めたのはご存じの通りだ。

それから3年を経た2022年、アストンマーティンはさらにパフォーマンスを高めた「DBX 707」を導入。同社が、「世界で最も速く、最もパワフルで、最高のハンドリングを誇る」と謳う通り、ランボルギーニ ウルスS(666ps)や、ポルシェ カイエン ターボ Eハイブリッド(739ps)をも凌ぐ、707psの最高出力と900Nmの最大トルクを誇る。

そんな“超”がつくほどのハイパフォーマンスSUVのステアリングを握る機会を得た。同車のメディアツーリングイベントが、北海道はニセコを拠点に開催されたのだ。

日本を代表するマウンテンリゾートとして世界中からツーリストが訪れるニセコ。試乗会場となったのは、名峰、ニセコアンヌプリ山の裾野、花園エリアに位置するラグジュアリーリゾート「パークハイアット ニセコ HANAZONO」だ。

ホテルのクルマ寄せで対面したDBX707は、ベースモデルたるDBX V8に較べ、よりアグレッシブでな雰囲気を漂わせていた。

フロントまわりでは、パワーアップされたエンジンにより多くのエアを送り込むべく、1949年、DB2(プロトタイプ)で初採用されたアイコニックなフロントグリルが大型化。ブレーキが強化されたのに伴い、ブレーキ冷却ダクトも拡大された。低く張り出したフロントスプリッターとサイドシルはグロスブラックでコーディネートされ、フロントからサイドへと流れるような一体感を形成している。

一方、リアエンドでは、デザイン性と空力特性を追求すべく、ルーフウイングに新しいリップ・スポイラーが追加されると同時に、ツイン・リア・ディフーザーがサイズアップ。大径の4本出しエキゾーストシステムと相まって、よりスポーティなイメージが強調されている。

とはいえ、DBシリーズを彷彿させる流麗なクーペフォルムゆえだろう。全体的なイメージは非常にエレガントで、ウッドカラーやブラックを基調としたモダンなファサードのラグジュアリーリゾートに、とてもマッチしているのが印象的だ。

ちなみに全長5,039mm、全幅1,998mmのボディサイズは、ディフェンダー110やランドクルーザー300といった大型SUVに匹敵するが、引き締まったフォルムや23インチ大径ホイールなどのアイテムゆえだろう、実際のサイズよりコンパクトに見える。

0-100km/h加速は3.3秒、最高速度は310km/h

ドライバーズシートに収まると、エクステリアと同様にアストンマーティンならではの世界が広がる。シートやインストルメントパネルには上質なセミアニリンレザーが張り巡らされ、センターコンソールにはリアルなカーボンパネルが配される。「スポーティネス」と「ラグジュアリー」が絶妙に融合した空間はDBシリーズをはじめとするクーペモデルと同様で、まさにアストンマーティンの真骨頂といえるものだ。

ドライバーを取り巻く空間は適度にタイトで、着座ポイントがやや高いことを除けば、ポジションはスポーツカーそのもの。こうした点からも、DBX 707がアストンマーティンのDNAを継承しているのだと感じることができる。

インストルメントパネルの中央に5つの丸いボタンが並ぶデザインも、昨今のアストンマーティンに準じたもの。真ん中に位置するスターターボタンを押すと、4リッターV8ツインターボが目覚め、低く力強いビートが車内に伝わる。

DBX V8と同様にメルセデスAMG製ユニットをベースとするこのエンジンは、よりレスポンス性に優れるボールベアリング・ターボチャージャーを採用すると同時に専用のチューニングを施すことで、ベースとなるDBX V8を157psと200Nmも凌駕する707psの最高出力と、900Nmの最大トルクを発生。2,245kgと重量級のボディながら、0-100km/h加速は3.3秒、最高速度は310km/hと、まさにアストンマーティンの名に恥じないパフォーマンスを発揮する。

ハイパワー化に対応すべく、9速ATは一般的なトルクコンバーターから、レーシングカー用に開発されたオイル冷却式湿式クラッチ式に変更。プロペラシャフトも、より強度が高いカーボンファイバー製に改められている。

一方、ストッピングパワーも強化すべく、軽量かつ幅広い温度領域で安定した制動力を発揮するカーボンセラミック製ディスクを採用したブレーキを装備。このブレーキによりばね下重量を40.5kg削減することにも成功した。

さらに、エアサスペンションシステムや電子制御アクティブロールコントロールシステムのチューニングの最適化、新バージョンのエレクトリック・リミテッドスリップ・リア・ディファレンシャルの採用、そして電動パワーステアリングのフィール向上など、走りに関わるさまざまな要素について、包括的に手が加えられた。

単なるDBX V8のハイパワー版では、決してない

そんなアストンマーティン渾身のハイパフォーマンスSUVを試乗するのは、パークハイアット ニセコ HANAZONOから、支笏湖を経て新千歳空港へと至る150kmほどの道のり。森の中を中速コーナーが右へ左へと展開するカントリーロードや、地平線へと延々とつづく直線路など、まさに北海道ならではの景観を堪能できる試乗コースだ。

羊蹄山やニセコ連峰などが織りなす絶景を車窓越しに楽しみながら、ホテル周辺の一般道をタウンスピードで流す。そんな状況で印象的なのは、車名に冠したパワーから想像される猛々しさをまったく感じさせないことだ。荒れた路面を通過しても、エアサスペンションが巧み路面の凹凸をいなして、不快な振動や突き上げを乗員に伝えない。上質で滑らかな乗り心地は、まさに高級サルーンのようだ。

DBX707には、オフロード用の「テレイン」、長距離走行での快適性を重視した「GT」、スポーツ走行に適した「スポーツ」、パフォーマンスを最大限に発揮する「スポーツ+」、そしてステアリングやサスペンション、エキゾーストなどをドライバーの好みで設定することができる「インディビジュアル」といった具合に5つのドライブモードが備わる。

交通量の少ないカントリーロードに至ると、センターコンソールのロータリースイッチを「GT」モードから「スポーツ+」モードに切り替え、ペースを上げた。すると、アクセル操作に対するV8ツインターボのレスポンスや、ステアリング操作に対する車両の動きが鋭さを増し、スーパースポーツそのものの走りを見せる。

コーナーの手前でブレーキペダルを踏み込むと、強力なカーボンセラミックブレーキが確実に速度を殺してくれる。制動のコントロール性、ペダルから伝わる剛性感、ともに申し分ない。

十分に減速してからステアリングを切り込むと、長いノーズが吸い込まれるようにインに向き、コーナーの頂点に達したところでアクセルペダルを踏み込むと、今度は強烈なGを伴って加速しはじめる。

その人馬一体感溢れるコーナリング時の挙動は、まさにDB系のスポーツカーを駆っているような感覚で、5メートルを越えるSUVであることを完全に忘れてしまう。

こうしたコーナリングマナーには、フロント52:リア48という前後重量配分など、スポーツカーとしての素性の良さも大きく寄与しているのだろう。まさにアストンマーティンが同車をして、「世界で最も速く、最もパワフルで、最高のハンドリングを誇る」と謳う所以だ。

驚くべきは、そんなピュアスポーツカーのごとき走りと、高級サルーンのような上質な乗り味が、極めて高い次元で両立されていること。そして、いずれのシーンにおいても、優れたエンジニアリングによるマシンとしての圧倒的な洗練性ゆえに、スペックから想像される猛々しさを一切感じさせないことだ。

単なるDBX V8のハイパワー版では、決してない。ドラビングダイナミクスから快適性まで、全方位的に大きく進化したハイパフォーマンスラグジュアリーSUV──それがDBX707の本質なのだ。

ASTON MARTIN DBX707|アストン マーティン DBX707
ボディサイズ|全長5,039×全幅1,998×全高1,680mm
ホイールベース|3,060mm
車両重量|2,245kg
エンジン|3,982ccV型8気筒ツインターボ
最高出力|520kW(707ps) / 4,500rpm
最大トルク900Nm / 6,000rpm
トランスミッション|9速AT(湿式クラッチ)
駆動方式|AWD
価格|3290万円

問い合わせ先

アストンマーティン
https://www.astonmartin.com/ja

出典:Web Magazine OPENERS

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