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CHAPTER4 2020年はスポーツモデルに、スタイルを。S&Gコンビという存在感|TUDOR

TUDOR|チューダー

実用機能を押し出したルックスだからこそ、ゴールドが“燻し銀”のような特別感を生み出す

ステンレススチールとゴールドの組み合わせ自体は、決して珍しいものではありません。ステンレススチールの軽快さ、そのスポーティな輝きにプレミアム感を与えるために、スポーツウオッチには度々、ゴールド素材があしらわれてきたからです。しかし、この「ブラックベイ クロノ S&G」のルックスには、かつてない斬新さがあると思います。日常生活のなかに溶け込みながら特別な存在感を放ち、同時に悪目立ちしないバランス感覚が備わっている。工業製品としての作り込みの良さ、デザインを積極的に愛でたくなる稀有なアイテムだと思います。

Photographs by OKAMURA Masahiro(CROSSOVER)|Text & Edit by TSUCHIDA Takashi

なぜ「ブラックベイ クロノ S&G」のゴールド使いが素敵に見えるのか?

日本人は、かつてホワイトゴールド好きと言われてきました。ひと目ではゴールドなのか、それともステンレススチールなのか分からない奥ゆかしさが、日本人好みと言われてきたのです。もちろん異論はありませんが、もしもそのゴールドの使われ方そのものに、必然性が伴っていたら? 目立ってしかるべき箇所にゴールド無垢を用いているならば、合理性を重んじる日本人の審美眼に刺さるのではないでしょうか? 隠すのではなく、しっかり見せて、誇るべきではないでしょうか? 武将の甲冑が黒と金のコーディネイトであったように、しかるべき箇所への必然の“金”には、わたくしたちのDNAが自然と頷くのだと思います。

その視点で「ブラックベイ クロノ S&G」を見たとき、まず目に飛び込んできたのが、リュウズとその上下のプッシュボタンでした。このモデルのリュウズは通常よりもひと回り大きなサイズであり、その存在が際立つのです。かつては“ビッグ・クラウン”とも呼ばれたこの特徴は、1958年、チューダーが初めて200m防水を達成した時のダイバーズウオッチの名残りです。当時、リュウズを大きくすることで、頑強なねじ込み設計を実現し、それまで100m防水にとどまっていた防水性能を2倍へと飛躍的に向上させたのです。

もちろん現代の技術であれば通常サイズへと戻せるでしょう。敢えてそれをせずに「誉れ」として残し、このモデルではゴールドとして称えているのです。

次に、ベゼルに目を移します。こちらもゴールド無垢にブラックアルマイト処理で目盛りを載せ、タキメーターを施しています。タキメーターは、クロノグラフの目鼻立ちであり、最も気になる要素。チューダーのクロノグラフは、代々、同じデザインが用いられてきましたが(※)、この歴史と伝統は、タキメーターの変わらぬデザインが代弁しています。

※1970年に誕生した初代機から、チューダー製のクロノグラフには500ユニットタイプのタキメーターが搭載され続けてきました

その重要な箇所をアルマイト処理したことが決め手です。プレミアムクラスのクロノグラフだと、サファイアクリスタルやセラミックで覆いがちですが、そこを昔ながらのアルマイト処理に留めて塗装膜の厚みを抑え、古き良き時代のエッジなデザインを守っているのです。さすがチューダー、ヘビーデューティさに徹する作りは、ブランド哲学と完全に呼応しています。そのスタンスの潔さが、シビれるんです。

そしてダイアルのゴールド使い。シャンパンカラーのツーカウンターは、一段深く立体的になっていることで、表情に奥行きを与えています。またゴールドの輝きを抑えたマットな質感にも着目してください。この渋さが、ゴールドを悪目立ちさせずに、アンダーステイトメントに抑え込んでいる要素だと考えます。

ツーカウンターのみならず、ダイアル外周の秒インデックス、“スノーフレーク”針のトリム、時インデックスのトリムなど、このモデルはマットなシャンパンゴールドで統一されています。そしてこれらのディテールは、チューダーのクロノグラフおよびダイバーズの進化の歴史を体現するもの。コツコツとブラッシュアップを続けてきた証であり、それを強調するためのゴールド使いです。

つまり、ゴールドを使うに値する理由がすべての箇所にあるのです。ただファッション的に、ゴールドをあしらっているのではなく、実用機能を追求した箇所にゴールドを与えているところに意味づけの深さがあります。だからこそ、このモデルには唯一無二のスタイルが感じられるのですね。

その練り上げられた風貌は、凛とした美しさを漂わせます。

凛とした、という表現がふさわしいのは、「ブラックベイ」のケースバック。シースルーとせず、防水性能の実現に特化しています。ねじ込み式であること以上に、何も装飾を加えない。潔さ溢れるところです。

このモデルのために製作されたブレスレットは、1950年代〜’60年代のアーカイブから着想を得たリベットタイプ。サイドに見られるリベットヘッドと、段の付いたブレスレットの組み方がデザインにアクセントを与えています。しかも、重すぎることなく、時計ケースとのバランスを程よく保ちます。ヘビーデューティな時計のブレスレットは意味なく重くなりがちですが、このモデルなら軽快に着けられるはずです。

また従来の人気ファブリックストラップに加えて、レザーストラップが用意されています。ミリタリーを彷彿とさせる背当ては着脱可能。ホワイトステッチが際立つブラウンレザーストラップです。

チューダーはただいまこの「ブラックベイ クロノ S&G」を押し出し中。このブランドにはたくさんの人気モデルがあるなかで、現時点での集大成となっています。そして「ブラックベイ クロノ S&G」の魅力は、この先何十年経っても、薄れることはないと私は思います。なぜならブラッシュアップを積み重ねてきたブランドの歴史と、ゴールドによるプレミアム感を合致させたプロダクトの完成度はとても高く、他の追従を許さないからです。

時計のトレンドは移ろいゆくものですが、そのなかでも存在感が薄れないモデルはあるものです。「ブラックベイ クロノ S&G」は、そんな稀有なモデルのひとつになるとわたくしは思います。

BLACK BAY CHRONO S&G
ムーブメント|自動巻きクロノグラフ(Cal.MT5813)
精度|COSCによるスイス公認クロノメーター認定
パワーリザーブ|約70時間
ケース素材|ステンレススチール
ケース径|41mm
ベゼル素材|18Kイエローゴールド
リュウズ、プッシュボタン素材|18Kイエローゴールド
ブレスレット素材|ステンレススチールと18Kイエローゴールドのコンビ
ストラップ素材|ファブリックもしくはレザー
防水|200m
価格|68万9000円(ブレスレット)、57万円(レザーおよびファブリック)※いずれも税別

問い合わせ先

日本ロレックス / チューダー
Tel.03-3216-5671
https://www.tudorwatch.com/ja

出典:Web Magazine OPENERS

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