Ferrari Purosangue|フェラーリ プロサングエ
フェラーリジャパン社長 フェデリコ・パストレッリ氏が語る、プロサングエの新しさ
フェラーリ初となる4ドア 4シーターモデル「プロサングエ」のジャパンプレミアが11月8日、世界遺産にも登録されている京都を代表する古刹「仁和寺」で開催された。会場では、フェラーリジャパン社長 フェデリコ・パストレッリ氏に話を伺う機会を得たので、氏の話も交えながら改めてプロサングエについてリポートする。
Text by YAMAGUCHI Koichi|Photographs by Ferrari Japan
どんな道でもフェラーリのパッションを楽しめる
一般的には、フェラーリ初のSUVとして注目されているプロサングエ。フェラーリ史上最も広いキャビンを誇るフル4シーターの4ドアボディは、全長4,973mm、全幅2,028mm、そしてホイールベースは3,018mm。いずれもポルシェ カイエンより大きい。全高はカイエンより100mmほど低いが、2ドアながらフル4シーターの4WDモデルとして話題を集めたフェラーリGTC4ルッソよりも200mmも高い。
しかし、プロサングエのプレスリリースには、「SUV」の文字はいっさい存在しない。あえてパストレッリ氏にこのクルマはSUVなのか尋ねると、やはり「ノー」との答えが返ってきた。
「プロサングエはあくまでもスポーツカーなのです。これまでのモデルと変わらないフェラーリのDNAを持っているからです。ただし、4ドア 4シーターということで、少し異なる特徴を持っています。4人が乗車でき、どんなコンディションの道でも従来のモデルと変わらないフェラーリのパッションを堪能できる新しいモデルなのです」
「プロサングエでは街乗りはもちろんのこと、砂まじりの道や雪道、カントリーサイドなどどんなシーンでも、家族とともに広々と快適な車内空間を楽しんでいただくことができます」とパストレッリ氏。仮に自身がオーナーならば、家族とともに北海道にスキーに行きたいという。
その一方で、フェラーリとしてのDNAを尊重すべく、開発陣は一切の妥協を排したとも語る。
「イタリア語で純血種(=サラブレッド)を意味するプロサングエという車名自体が、フェラーリのDNAを受け継いでいることを表しているのです」
その象徴ともいえるのが、新開発の6,496cc V型12気筒エンジンなのだそうだ。2002年デビューの「エンツォ・フェラーリ」に搭載されたV12の進化形ともいえる同ユニットは、最高出力725cv/7,750rpm、最大トルク716Nm/6,250rpmというアウトプットを誇りながら、2,000rpmで最大トルクの80%を発揮するフレキシビリティも備えている。
このアイコニックなパワーユニットをフロントミッドの低い位置にマウントし、8段デュアルクラッチをリアデフと一体化させたトラスアクスル方式を採用。さらに、GTC4ルッソと同様のパワー・トランスファー・ユニット(PTU)をエンジンの前方に組み合わせ前輪を駆動するユニークな4WDシステムを採用することで、前後重量配分は49:51を実現している。パストレッリ氏が語るフェラーリのDNAは、こうしたところにも現れているといえるだろう。
数字には表れないフェラーリのDNA
パフォーマンスに目を向けると、最高速度310km/h、0-100km/h加速3.3秒、0-200km/h加速10.6秒と、“サラブレッド”の名に恥じない性能を誇っている。
「パフォーマンスといいますとこうした数字だけに目がいきがちですけれど、運転したときに得られるエモーションからもフェラーリのDNAを感じていただけると思います」
パストレッリ氏はその一例として、ドライビングポジションについて話してくれた。曰く、4ドア フル4シーターでありながら、他のフェラーリと変わらないポジションを実現しているのだという。
「私たちは常にお客様のニーズに応えられるプロダクトを開発していきたいと考えています。プロサングエについては、大人4人が快適に過ごせ、乗り降りも楽なフェラーリを求める声をいただき、4ドア フル4シーターというパッケージングに行き着きました。
と同時に、フェラーリである以上、スポーツカーならではの味わいは残してほしいという希望もいただきました。従来モデルのようなスポーツカーとしてのパフォーマンスを持ちながら、運転して楽しく、どこへでも快適に走って行ける。こうしたコンビネーションがプロサングエをユニークな存在にしているのです」
フェラーリがプロサングエを導入した背景について、パストレッリ氏はそう説明してくれた。実は、フェラーリはかつて顧客からの要望で4ドアのプロトタイプを手掛けたことがある。しかし、フェラーリとしてのパフォーマンスを達成することができず、プロダクト化には至らなかった。
今回、プロサングエが商品化された背景には、左右後輪の切れ角を独立して制御するリアステアや、新たに開発されたアクティブ・サスペンション・システムといった最新のテクノロジーの採用があるという。
ちなみに、世界初となるアクティブ・サスペンション・システムは、油圧式ダンパーに48V電源で駆動するモーターを組み合わせ減衰力をコントロールするというもの。コーナリング時にボディのロールを制御すると同時に、高周波のバンプを越える際にタイヤの接地面をコントロールするのにも有効で、フェラーリの他モデルと同様のパフォーマンスを実現することに寄与しているという。
サステナビリティはフェラーリにとってメインのタスクである
さて、夜の帳が下りると、仁和寺の境内に設置された大きな特設ステージに、V12のサウンドを轟かせながらプロサングエが登場した。
確かに全高は既存のフェラーリより明らかに高く、SUVと呼びたくなるシルエットだ。しかし、従来のフロントエンジン・モデルに通じるロングノーズ & セットバックしたキャビンのクーペボディは、抑揚のあるなめらかな曲面で構成されていて、フェラーリの一員であることを感じさせる。
ちなみに観音開きのリアドアを採用したのは、乗降性の向上と、ボディを可能な限りコンパクトに仕上げるためなのだそうだ。
キャビンはというと、昨今のフェラーリのGT系モデルと変わらず豪奢な印象だ。フロントと同様に完全に独立したフルバケットタイプのリアシートは、大人が快適に過ごせるくらいゆったりとしたスペースが確保されている。内張りのアルカンターラには認証取得のリサイクルポリエステルを用いるなど、サステナビリティへのアプローチもなされているという。
「サステナビリティは、フェラーリにとって非常に重要なテーマです。メインとなるタスクであり、ゴールでもあります。プロダクトだけはなく、ディーラーネットワークも含め会社が取り組む全てにわたって厳格な目標を設定し、その向上に取り組んでいます」
パストレッリ氏がそう語るとおり、今やフェラーリにとってもサステナビリティは避けては通れない道なのだ。
「プロダクトに関しては、私たちは2026年には60%、2030年には40%というロードマップを描いて電動化は目指していきます。とはいえ、それはあくまで電動車の割合が増えるということであって、エンジンはこれからも造り続けていきます」
ところで、フェラーリ初のフル4シーター 4WDモデルであるFFおよびGTC4ルッソを導入した際には、新規顧客の開拓につながり、オーナーの平均年齢層も10歳ほど若返ったと聞いたことがある。プロサングエでは、どのようなユーザーをターゲットとしているのだろうか。
「既存のお客様から多くのリクエストをいただいていますので、まずはそうしたお客様との関係を大事にしていきたいと思っています。もちろんそれ以外のお客様にも、このクルマを通して、新たにフェラーリファミリーの一員になっていただきたいと考えています」
具体的な数字は明らかにできないが、ジャパンプレミアの時点ですでにかなりのオーダーをいただいているとパストレッリ氏はいう。世界的なSUVブームの波はフェラーリにも押し寄せているようだ。
Spec
Ferrari Purosangue|フェラーリプロサングエ
ボディサイズ|全長 4,973 × 全幅 2,028 ×全高1,589 mm
ホイールベース|3,018mm
トレッド前/後|1,665 / 1,632mm
車両乾燥重量|2,033kg
重量配分 前/後|49% / 51%
エンジン|6,496 cc 65°V型12気筒DOHC
最高出力|725cv/7,750最大トルク|740Nm / 6,250rpm
最大トルク|716Nm/6,250rpm
最高許容回転数|8,250rpm
圧縮比|13.6:1
トランスミッション|8段F1デュアルクラッチ
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|255/35R22 / 315/30R23
乾燥パワーウェイトレシオ|2.80kg/cv
0-100km/h加速|3.3秒
0-200km/h加速|10.6秒
200km/h-0km/h|129m
最高速度|310km/h
問い合わせ先
フェラーリ
https://auto.ferrari.com/
https://www.ferrari.com/ja-JP/
出典:Web Magazine OPENERS