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ランバン コレクションの価値をともに支える “岩手モリヤ”という品質・前編|LANVIN COLLECTION

LANVIN COLLECTION|ランバン コレクション

ランバン コレクションの価値をともに支える “岩手モリヤ”という品質

世界最古のクチュールメゾンのひとつである「ランバン」のイメージを受け継ぎ、ラグジュアリーな素材や職人技が駆使されたカッティング、こだわりのディテールワークで上質かつ洗練されたアイテムを展開する「ランバン コレクション」。その妥協なき品質を守るためにパートナーとして指名したのは、「岩手モリヤ」という縫製工場でした。
Text by OSUJYO Ryouta|Photographs by CHO Uki

ランバン コレクションのクオリティをつくり上げる生産工場

春を目の前に降った雪を踏み越えて、OPENERS取材班が訪れたのは岩手県久慈市の海辺に建つ工場。1988年にこの地で創業した「岩手モリヤ」は、ウィメンズのジャケットやコートを手がける婦人服の縫製工場です。特にランバン コレクションとのつながりは深く、20年以上にわたって主にジャケットの生産を担当してきました。

近年、日本のアパレル産業は、生産拠点の海外移転などによって縮小の一途をたどり、縫製産業全体の従事者も10年前と比較すると約30%も減少しています。売り上げの減少や人材不足から廃業する縫製工場も少なくありません。

多くの縫製工場が苦境に立たされる中、岩手モリヤは70名を超える職人さんたちを抱え、高価格帯のジャケットやコートを月に約4000着も生産しています。
また、2018年には経済産業省から「地域未来牽引産業」に、2023年には「時代を担う繊維産業100選」に選定されるなど経済界でも注目を集めています。
――――なぜ、岩手モリヤは、これほど活気に満ちているのでしょう?

岩手モリヤ 社長 森奥信孝(もりおく・のぶたか)
1953年東京文京区生まれ。文化服装学院を卒業後、実父が創業した縫製会社のモリヤ洋装に入社。同社から分社する形で、1988年に岩手県久慈市に岩手モリヤを設立し、社長に就任。北いわてアパレル産業振興会代表理事、東北六県縫製団体連合会副会長なども務める。

デジタル化によって効率が高められた前処理工程

「その答えは、工場をご覧になれば、わかっていただけると思います」
そう語るのは社長を務める森奥信孝氏。独自の経営改革によって、岩手モリヤの生産クオリティを飛躍的に高めた人物です。

「まずは前処理の工程をご覧ください」

前処理とは、縫製の前に行う工程のこと。料理にたとえると、食材の準備や下ごしらえの段階にあたります。

「こちらの部屋が『生地試験室』です。生地はそれぞれ伸び縮みの方向や収縮率が異なります。同じ品番の生地であっても、色によって微妙な差が出ます。そこで使用する生地を試験してデータ化することで各ブランドのパターン(洋服の型紙)の作成に役立てています」

生地の詳細なデータは、発注元からの仕様書にも書かれていない場合が少なくないため、岩手モリヤでは、縫製を行う前に独自の試験を行っています。そもそも素材や生地の特性を考慮して、試験を行なっている工場はあまりありません。

特注した機械を使った『スポンジング』も岩手モリヤが力を入れている工程です。

「わかりやすくいえば、生地をもっともよい状態にする工程です。多くの生地は生産された後、グルグルに巻かれた原反(げんたん)の状態で保管され、工場へ届けられます。そのため、さまざまな方向からのテンションや湿気の影響を受けて、伸びたり、縮んだり、歪んだりしています。そこで生地に蒸気や熱を当てることで、生地本来のかたちに戻してあげるのです」

スポンジングを怠ると、ジャケットを仕立てる過程で生地の伸び縮みが発生し、歪みや寸法の狂いにつながってしまうといいます。

生地の準備が整ったら、次は『CAD』の工程へ。CADとは服飾デザインに特化したソフトのことで、パターン(洋服の型紙)の修正を容易にすることができます。

「5年前にクレアエンポⅡという新しいソフトを導入しました。これを使って、生地試験の結果をチェックしながら、ブランドからいただいたCADのデータに微修正を加えていきます。3Dで仕上がりのイメージをチェックできるほか、グレーディング(サイズごとの型紙の製作)やマーキング(生地の中に型紙を配置する作業)にも対応できます」

『CAM』はCADで作成したパターンをもとに生地を裁断するマシン。手作業に比べ、スピードや効率を格段に高めることができます。

型紙のデータはインターネットでCAMに送信され、なるべく生地ロスがないように配置されたそのデータは真上に設置されたプロジェクターによって生地の上に映し出されます。そして型紙に沿って自動的にカットされていきます。

「裁断で特に難しいのが、チェックなどの柄を合わせる作業です。以前は5人の職人が担当していましたが、最新マシンを導入することで、1人での作業が可能になりました」

「手作業が多い」=「高級である」とは言い切れない

「どうでしょう? 人の少なさにびっくりされたのでは」と森奥氏。
たしかに、生産数の割には人が少ない気がします。大型マシンを扱う職人さんの数は1台につき1~3人程度。静かな工場内にマシンの規則的な作動音が響きます。

「質の高い服を作るには機械を使用したほうが効率や質が高くなる工程があり、単純に『手作業が多い』=『高級である』とは言い切れません」

岩手モリヤでは、前処理の工程に機械を積極的に導入することで、人件費や手間ひまの削減に努めています。

「人員の削減は生産の合理化につながりますが、本当の目的はそこにはありません。すべては人を育てるためです」

>>後編はこちら

今シーズンの岩手モリヤ社で作られた、しなやかで、美しい仕上がりのジャケット
ジャケット¥79,200

出典:Web Magazine OPENERS

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