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究極の希少石「パライバトルマリン」──スペシャリストが語る、その魅力とは?|FEATURES

FEATURES|パライバトルマリン

「パライバトルマリン」日本人が新たなる価値を見いだした究極の稀少石

いま、世界中の宝石コレクターや名だたるハイジュエリーブランドが注目し、その希少性から「幻の宝石」と称されるパライバトルマリン。宝石の目利きが語る、その魅力とは?
Photographs by NAGAO Masashi|Text by OPENERS

海と空の美しさを凝縮したかのような鮮やかなブルーグリーン

「鮮やかな海や空をイメージさせるパライバトルマリンのブルーは、海と空の美しさを凝縮したかのようです。この宝石には、人が最も美しいと感じるブルーグラデーションのすべてが詰まっているのです」

そう語るのは、高品質で希少な宝石の輸入販売を行うヌールジェムジャパンのCEO、メラジュ・ウディンさんだ。

ヌールジェムジャパンのメラジュ・ウディンCEO

トルマリンと呼ばれる鮮やかなブルーの宝石をご存じの方は多いだろう。なかでもメラジュさんが注目しているパライバトルマリンは、ブラジル・パライバ州の一つの鉱山から産出される、極めて希少なブルーグリーンのトルマリンだ。その類いまれな美しさと、世界三大希少石の一つと形容される希少性から宝石の世界では最高峰に位置づけられ、「幻の宝石」の異名を持つという。

1980年代後半、ブラジルのパライバ州で偶然発見されたこの宝石は、当初「ネオンブルー・トルマリン」と形容された。まるでライトで照らし出されたように青く輝くからだ。

その後、この宝石は産地にちなんでパライバトルマリンと名付けられ、サファイアやエメラルドを凌駕するほど価値のある宝石として世界中の宝石商やコレクターから注目を集めることとなる。

しかしメラジュさんは、パライバトルマリンが世界的に脚光を浴びる以前、実は日本人が最初にその価値に気づいたという。

「意外かもしれませんが、パライバトルマリンが発見されたときに、最初に注目して買い付けたのは日本人でした」

当時の日本はバブル経済に沸いていたこともあり、日本人バイヤーがいち早くパライバトルマリンの美しさに惹かれ、ビジネスでの可能性を見いだしたのだという。

パライバトルマリンが高く評価される理由は2つあると、メラジュさんは語る。

「1つは、冒頭でお話しした通り色の美しさです。トルマリンのなかでも青緑色のものが最も希少で人気があるのですが、パライバトルマリンは美しいブルーとグリーンが1つの石に奇跡のごとく溶け込んでいます。しかもその色合いがとても鮮明で、見る角度によってさまざまな表情を見せてくれる。まさに芸術品のようです」

ちなみに、この美しい色合いは、パライバトルマリンに含まれる微量の銅とマンガンによるものなのだそうだ。

取り引き額は80〜100倍に

2つ目の理由としてメラジュさんがあげたのが希少性だ。

「産出される鉱山が世界で一か所しかなく、しかもそのバタリア鉱山の埋蔵量が極めて少ない。事実上、採掘は終了しています」

この鉱山は1980年代後半に発見されたが、1990年頃に生産がピークを迎え、2000年代にはほとんどの埋蔵量が採掘されてしまったという。「パライバトルマリンが生まれたのは地質的な偶然の産物で、同じ鉱床が再び見つかる可能性はほとんどありません」とメラジュさんは指摘する。

実は、アフリカでも青緑色のトルマリンが発見され、色味が近いことからパライバトルマリンと呼ばれることがある。しかしメラジュさんは、クオリティはブラジル産に比して遙かに劣るという。

こうした希少性から、高品質なブラジル産のパライバトルマリンは高値がつけられている。

「パライバトルマリンが発見され、初めてジェムショー(宝石や鉱物などの展示会)に出品されてから30余年になりますが、取引格はだいたい80倍から100倍になっています」

10年ほど前から、サザビーズやクリスティーズといった一流オークションハウスでも取り扱われ、さらにコレクターから注目されるようになったのも、価格高騰に拍車をかけていると、メラジュさんはいう。

「ブルーグリーンの美しい色味が映えることから、昨今は国内外の名だたるハイジュエリーブランドからも耳目を集めています。あるハイジュエリーブランドが発表したパライバトルマリンのジュエリーのなかには、1億円に及ぶものもあります」

メラジュさんがそう語るように、昨今は名門ハイジュエリーブランドも競うようにパライバトルマリンを用いた作品を発表している。それも、パライバトルマリンの美しさと希少性の高さを物語っているといえるだろう。

メラジュさんは「資産運用の一環としても、パライバトルマリンは非常に優れた選択肢になる」と語る。供給が減る一方で需要は高まるという、極めて資産性が高い宝石だからだ。

「長期的な投資対象としてお薦めできますし、宝石の需要は景気動向にも左右されづらいため、リスクヘッジ資産としても魅力的です」

パライバトルマリンの魅力は、美しさと希少性、そしてそれらがもたらす資産価値にある。人々を魅了し続けるブルーグリーンの輝きは、永遠に色褪せることはないだろう。まさに日本人バイヤーが見出した「新たな価値」が、今なお多くの人々を魅了しつづけているのである。

問い合わせ先

ヌールジェムジャパン
Tel.03-3834-2078
https://www.noorgems.com/

出典:Web Magazine OPENERS

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