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短期集中連載 第2回 革靴LOVERSに贈る、実用ドレスシューズの最高峰「オールデン」のすべて|ALDEN

ALDEN|オールデン

ALDEN 日本総代理店ラコタ代表、血脇孝昌氏に聞く「オールデンの素材選びとリペアについて」

アメリカを代表する革靴ブランド「オールデン」。創業から136年にわたり、一貫して革靴を作り続ける老舗である。そのポリシーは「歩くための高品質なギアをつくり続ける」ことであり、素材選びにこだわり、リペア後も初めて履いたときと同じ履き心地を維持することに心を砕く。これまで語られてこなかった逸話をお届けする短期集中連載の第2回目は、オールデンの素材選びとリペアについて、日本総代理店であるラコタ代表の血脇孝昌氏に語ってもらった。

Photographs by OHTAKI Kaku | Text by KOIZUMI Yoko |Edit by TSUCHIDA Takashi

世界中から“お眼鏡に適う”素材を厳選

「Brooks Brothers (ブルックスブラザーズ)に合うスタイルを持っている――それがMade in USA靴の基本でした」

日本にオールデンが上陸した1980年頃における日本の若者のファッションのお手本といえば、アメリカの大学生のライフスタイル。彼らのファッションが大きなトレンドを席巻、ローファーは欠かせないアイテムとなっていった。時代は変わり、モード、イタリアンクラシコとトレンドは移り変わっても、オールデンの普遍的デザインは、ファッションの中心にあり続け、あらゆるコーディネイトをカバーしている。

そして40年後の現在、オールデンには魅力あふれるモデルがラインナップしているが、ベースとなるのはやはり特徴的なラストから生み出される圧倒的な履き心地の良さだ。その履き心地を支えるのが、選び抜かれた上質なパーツと革素材、カーフスキンやコードバンである。

「カーフスキンレザーは、ドイツ、フランス、イギリスをメインに、それぞれのモデルに最適なものを厳選しています。素材選びは人任せにせず、社長のアーサー(Arthur S. Tarlow jr)が自ら行っていて、いまでも毎朝、作業の前に革をチェックしています。彼はずっと現場にいた人で、その靴づくりに妥協は一切ありません。いまも彼のお眼鏡に適ったものしか、外に出てくることはないんです」

オールデンといえばコードバンと言われるほど象徴的な素材だが、これもまた社長自らのチェックを受けている。誰もが恋に落ちると言われるほど、手を加えるほどに美しさが増すあのコードバンの輝きは、彼の厳しい目が支えている。

LEATHER/毎朝必ず行われているのが、レザーの品質検査。朝に行うのは柔らかな自然光の元でレザーを見るためで、キズはもちろんのこと、血筋の有無や、力を加えてシワが入らないかどうかまでくまなくチェック。最上の革のみを使用する。こと細かな検査が求められるコードバンは、社長自らが行う徹底ぶり。

CUTTING/革の裁断に使用する型取りの器具を使用しながら、革のキズ、ブク、血筋等悪い個所を見つつ、部止まり良く裁断をしていく。コードバンにおいては、表面のシェービングの流れを見ながら裁断するので、長年の経験を持つ職人が行う。

STITCHING/型抜きされたアッパーレザーを縫い合わせる工程。縫製にはミシンが用いられるが、当然ながらそのミシンを操作するのは人の手。美しく縫うには、熟練職人の経験がモノをいう。ちなみに、ウィングチップなどの穴飾りがあるシューズは、ソーイング作業の前に意匠入れ(パンチング)が施される。

LASTING/縫製したレザーを木型に被せ、力を加えて引きのばすことで、木型の形にアッパーを形成する作業が吊り込み。コードバンやカーフ、スエードといったレザーの種類や、用いる木型のシェイプによって吊り込みに最適な力が異なるため、オールデンではコンピューター制御によってマシンの力をコントロールしている。

HANDSEWING/タンカーブーツやペニーローファーは、モカ部を手縫いによるスキンステッチで縫合する。表から入れた針を裏へ出さないよう通し、波打つような紋様を表現するこの特殊な縫製ができるのは、工場でも2人の職人だけ。こと繊維が緻密なコードバンを縫うには、1足で小1時間ほどの大変な労力を要する。

GOODYEAR WELTED/オールデンのシューズは、ソールの張り替えが利き、長きに渡る愛用に耐え得るグッドイヤーウェルト製法で作られている。まず、アッパーにリブと呼ばれる連結パーツを縫い付け(すくい縫い)、そのリブをソールに縫い付ける(出し縫い)のが、このトラディショナルな製法の特徴であり、高い耐久性の源だ。

CORK/オールデンのシューズは、インソールとアウトソールの間に、松脂を練り込んだコルクを詰めている。このコルクにより、シューズのクッション性を持たせるほか、足型に沿って沈ませることで、よりフィット感を高める狙いがある。最高の履き心地を追求するオールデンは”コルクたっぷり”が伝統だ。

FINISHING/ウエルトとアウトソールを縫い合わせた底廻りのコバを、熟練職人が回転するカッターに押し当てて、上下のブレ無く同一の幅に削っていく。その後、コバに塗料を塗り、布バフでワックス掛けをし、丁寧に磨き、光沢を出しながら仕上げる。

DRESSING/汚れを取り、仕上げ剤クリームを塗り、ブラシ掛けやバフ掛けを何度も行い、両足がきれいな艶で整うように仕上げている。オールデンが長年培ってきたコードバンの仕上げ技術の見せ所である。

PACKING/中敷が貼られ最終検品が終わった後、靴箱に品番・サイズが打たれ、シューバッグと共に箱詰めされ世界中に出荷される。

新品同様のエネルギーを注ぎ込むリペア作業

オールデンは一般的なファッションブランドと違い、毎年新作を発表することはない。

「オールデンにとっての靴とは『歩くための高品質なギア』であり、これが全うできない製品は世に出ることはありません。例えば新しいモデルを企画する場合も、木型づくりに始まり、素材を選び、縫製し、底付けされた靴を試し履きして何度も試作を繰り返します。4~5年かかることも珍しくありませんし、そのうえで納得いかなければボツになります」

この厳しさこそが、オールデンをオールデンたらしめている理由だ。そしてこの姿勢はリペアに対しても同様である。

「彼らは外側からは見えないパーツであっても、最善のものを独自に仕入れて、さらに独自の加工を施しているんです。一般的にグッドイヤーウェルト製法の靴底は硬いものですが、オールデンの靴底は柔らかく、すんなり曲がる。つまりオールデンが施した特別な加工とは、“強度”と“柔軟性”という、相反するベクトルを同時に向上させるものでした。したがって純正パーツを超えるものは、オールデンにおいてはひとつもないんです」

ゆえにラコタハウスでは、オールデンから支給された純正パーツがすべて用意されている。

「『足を入れたときから“いい靴”でなければダメで、履かれて初めて完成する』という発想は、リペアも例外ではありません。馴染んだ履き心地とルックスを再び実現することもまた、リペアにおける不文律です」

ラコタハウスALDEN SHOE REPAIR SERVICE

“靴は歩く為のギア”を理念に130年以上レザーシューズを生産するALDEN社は、その材料にも歩行を手助けする厳選されたオリジナルパーツが使用されています。中物(練りコルク)を挿入したグッドイヤーウエルト製法は、厚みがある分、返りと呼ばれる靴の屈曲性が極端に悪いと考えられてきましたが、ALDENはひと手間加えたオリジナルパーツでその難題をクリア。インソール、ミッドソール、アウトソールに柔らかで耐久性に優れる素材を用いることで、驚くような履き馴染みを実現し、「痛みを我慢しながら育てる靴」と言われるグッドイヤーウエルト製法の概念を見事に打ち破りました。

また、トウスプリングと呼ばれるつま先の反り返りは、歩行時の動きを利用し、より快適に歩く工夫がされています。モディファイドラストなどに使われるフッドバランスのロゴが目をひくゴムヒールについても木型の特性を活かしたアーチサポートの活性化に役立っています。

これらのオリジナルパーツが合わさり始めてALDENの履き心地の良さが生まれます。履き心地を追求するALDENだからこそ、純正パーツを用いて本来の機能を損なわずリペアをして10年、20年と愛着の持てる1足、履き心地に納得できる1足に育ててください。

ALDENオリジナルパーツの用意はラコタハウスだけのサービス。リペアの要望は、お気軽にスタッフにご相談を。

ALDEN日本総代理店ラコタ代表、血脇孝昌氏。靴のパーツを扱う仕事に携わるなか、オールデン社長と会い、1994年にオールデンの日本の輸入窓口としての任務を任されるようになった。オールデンの履き心地の良さに魅了されてきたALDENエヴァンジェリスト(伝道師)。

問い合わせ先

ラコタ
Tel.03-3545-3322
https://www.lakotahouse.com/
info@lakotahouse.com
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出典:Web Magazine OPENERS

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